東北大学病院小児科医局DXについてインタビューしました

普段は患者さんの診療や、医学生の指導を行う大学病院の医師ですが、それ以外にも、「医局」と呼ばれる場所で、研修医の教育や研究など、様々な業務を行っています。
そんな、診療、教育、研究と多忙な医師たちが、「医局DX」に向けて立ち上がりました。
今回は、東北大学病院小児科医局のDXについてのインタビューをお届けします。

インタビューに協力してくれた小児科医局DXチームメンバーの方々

大田 千晴(おおた ちはる)先生

 小児科医師

内田 奈生(うちだ なお)先生

 小児科医師

山際 千鶴(やまぎわ ちづる)さん

 小児科事務職員

鈴木 弘美(すずき ひろみ)さん

 小児科事務職員


インタビューの聞き手

業務のDX推進プロジェクト プロモーションチーム

 以下、プロモチーム

医局DXとは?

―― 今日はよろしくお願いします!小児科医局は、医師が主導してDXを推進しているとお聞きしました。DXを進めることになったきっかけや取組内容について教えてください。

大田先生

これまで、医局の情報共有は主に紙ベースで行っていました。
しかし、紙をやり取りする手間やセキュリティ面の問題があったため、まずはGoogle Workspaceを活用して医局ポータルサイトを作りました。連絡事項の掲載だけでなく、ミーティングルームの予約もポータルサイトで出来るように整備したり、クラスルームを使った学生教育や、チャットでの情報共有といったICTツールの活用による業務の効率化を通じて、医局全体の業務改善を実現した取組みとなりました。

―― ポータルサイトを活用し始めたことをきっかけに、様々なICTツールの活用が進んだわけですね。そもそも、大田先生が「医局DX」を呼びかけようと思われたきっかけは何だったんですか?

大田先生

今後医師の働き方改革が適用され、これまで常態化していた医師の長時間労働の是正が急務である、という状況がまずありました。それに加えてコロナ禍によるオンライン会議やメールといった、これまで紙で行っていた業務のデジタル化が急速に進む中、他の部署で実施した業務のDX化の記事が目に入り、我々もやろうと医局のDX推進チームを作ることにしたんです。

内田先生

私の場合、様々な業務が年々膨らみ、自身の業務量が把握しづらくなっていたのと、子どもがまだ小さいため、家庭とのバランスを保つためにも業務の見える化・効率化をしたいと思っていました。
そんな時、他の診療科でクラスルームを使った学生教育を行っていると聞き、自分たちも取り入れてみるととても便利なことが分かったんです。そこから、他にもDXできることがあるのではと業務のDX化に本格的に取り組むようになりました。

プロモチーム

医療の現場では遠隔操作が出来る手術支援ロボットの導入や、タブレットを使った分かりやすい検査結果の説明といった医療DXが進んでいたものの、医局の業務はまだまだ紙ベースだったんですね。

※グイグイと小児科DXチームを牽引し、DXの輪を広げていらっしゃる大田先生(中央)。
現場では常に活発な意見交換が行われています。

医局DX推進のために気を付けていること

―― 医局のDX化を進める中で、苦労したことやハードルはありましたか?

山際さん

ポータルサイトひとつとっても、Google Workspaceの知識に個人差がある中で、職員全員に使いやすいと思ってもらうにはどうすればいいか、という点は苦労しました。利用者アンケートを行ったり、WGメンバーに意見をもらったり、様々な視点での意見を集めました。

鈴木さん

Googleスプレッドシートのような共同編集ツールにまだ慣れていない時は「誤ってデータを消してしまうのでは」という恐怖心を持ってしまい、なかなか積極的に使用できないなど、気持ちの面でのハードルを感じました。
出来るところから少しずつ慣れていく過程が大切だと思います。

※今日は何の日?といった豆知識もサイトに掲載されており、医局員の心を和ませているのだそう。
大田先生

医局のスタッフの中でも、業務効率化やDX化に対する意識の違いや、パソコンの得手不得手がありますから、時間をかけて丁寧に進めることを心掛けました。

我々の目標はDXそのものではなく、業務の見直しや効率化によって本来の業務に使える時間を増やすことです。
患者さんのために費やす時間や研究、学生に教育を行う時間などを増やしつつ、心身の健康を保つための休息の時間も持てるように、「DX推進が目的ではない」ということを忘れないように気を付けています。

プロモチーム

便利ではあるけれど押しつけにならないように、そして、「使いやすい」と思ってもらえるようにするというケアが重要だったんですね。
また、「DXすることが目的ではない」というのは本当にその通りですよね!DXによって得られるメリットをしっかり共有することが成功のカギかもしれません。

DX推進による様々なメリット

―― ここからは、具体的に小児科医局で活躍しているICTツールとおすすめポイントを教えてください!

鈴木さん

これまで紙媒体やメール添付で回収していた書類をGoogleフォームに移行したことで、回答側は記入漏れがなくなり、回答作業が楽になったという声が聞かれました。取りまとめる側も、回答データを一覧出力することでスムーズに内容を確認できるなど、作業効率が向上しました。

山際さん

先生方への依頼は、これまで案件ごとにメールや声掛けで行っていたのですが、今ではポータルサイトにまとめて掲載しているので作業が簡略化できました。

※小児科ポータルサイトには、医局業務に必要なツールやリンクが並び、必要な情報に速くたどり着くことが出来る。
大田先生

これまで電話が主だった診療チーム内での情報共有を、個人情報を入れない運用でGoogleチャットに置き換えたのですが、これがとても良かったです。
医師は電話に出ることができないタイミングが多いので、電話をする側が何度も掛け直すという手間がありましたが、チャットでは各自の都合の良いタイミングで見られるので、情報共有が簡単にできるようになりました。

プロモチーム

患者さんの対応をしている時は、電話に出ることもメールを確認することもできないですものね。

大田先生

Googleドキュメントやスライドもとても便利です!
複数人で論文を執筆していると、これまでは誰が持っているデータが最新版なのか、分からなくなることがありました。これが、Googleドキュメントやスライドを使うことで、常に最新版を共有できるようになっています。コメントの機能を使って、執筆者同士が確認したり、相談したり出来るのも便利ですね。

DX化を通じ、職場環境を良くするための「取組みの見える化」が出来たことで、自ら工夫をしてくれる人たちが増えました。
また、緊急でない業務メールは夜間に出さない、メールの宛先に関係のない人が入っていないか確認するといった、様々なリテラシーが全体的に向上したという効果もありました。DX推進の取組みが浸透してきたことを実感しています。

プロモチーム

組織的にDX推進に取り組むことで、アイデアや意見を言いやすい環境が醸成されたというのも、大きな推進力になっているのだと感じました。本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。

これからも「東北大学 DXナビゲーション」では、学内で進められている様々なDXの取り組みを取材して紹介していく予定です!
ぜひご期待ください。